第4章

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深閑とした雰囲気の教室に、窓から少しばかり蒸し暑い風が入ってきた。 カーテンがゆっくりと靡く様子を見ていると、何か思い付いたかのように、彼は口を開いた。 「そういえば、東條さんって、携帯持ってるの?」 その言葉に「あ、はい」と返答すると、彼は「じゃあ、連絡先交換しない?」と言った。 連絡先を、交換・・・。 「えっ・・・!」 突然のことに、いつもより大きな声が出た。 恥ずかしながら、私は人生で一度も、異性と連絡を取り合うこともなければ、交換したこともなかった。 つい最近、やっと朝比奈さんと交換したばかりだ。 だから、彼の口から飛び出した事案に、酷く驚いたのである。 「わ、私、で、良い、のでしょうか」 「え、 東條さん以外、いないでしょ? それとも嫌? やっぱり迷惑かな」 その言葉に慌てて首を横に振った。 「め、迷惑じゃないですっ!」 こんな面白くもない人間と連絡先を交換して間宮励は嬉しいのかなとか、彼の連絡先を知りたがってる女子は沢山いるのに、私なんかが良いのかなとか、そういう気持ちの方が大きかった。 だけど。 「ぜ、是非・・・」 口から勝手に自分の素直な気持ちが漏れてしまった。 だって嬉しかったから。 間宮励の方からそうに言ってきてくれたことに、何故だか驚喜してしまったのだ。 「まじで? やった、すっげぇ嬉しい!」 ーーあ いつも大人っぽい雰囲気とは違う、どこか少年のような無邪気な笑顔に、持っていた鞄を落としてしまった。 な、なに、今の・・・? 「あ・・・俺、はしゃぎすぎた? ごめん、今のは無し」 私の反応に何かを察したのか、彼は大きな手で顔を隠し、いつもの彼に戻ったが私の速まる心臓の音は暫くおちつきそうもない。 ーーさっきのは、凄い破壊力だよ。 彼の今まで見たこともない笑顔に、自分の全てが持ってかれそうな気がした。 彼の耳に再び熱が集中していくのと同じ様に、私の耳も、いや、身体中が一気に熱くなった。
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