◇◆◇

10/20
148人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
見ると、一台のバイクが近づいてくるところだった、前時代の乗り物、タイヤで走るタイプだった、それに目を奪われたが。 すぐに別の事に気付いた。 遠目でも判る、黒髪の男が乗っていた。その黒髪は長く、ポニーテールが揺れていた。 近づいてきて判る、肌も浅黒い、その姿にカイルは息を呑み、アリアはさすがに驚いたのかカイルの背に半分身を隠し、袖をそっとつまんだ。 バイクは二人の近くまで来ると、横付けに停めた。 「よう、初めまして、兄弟」 ゴーグルを外し微笑む、その瞳はカイルと同じ、僅かに青みを帯びた漆黒だった。 「お姫様も」 アリアには会釈をした、アリアも小さく会釈を返す。 「ライル……!」 その名を呼ぶと、ライルは屈託なく笑った。 「永遠の別れの前に顔くらい見てみたいと思ってな。旧市街でも黒髪の奴なんかいなかったから、どんなもんかと思って」 「あなたは、何をしたんですか?」 カイルが聞いた。 「爆弾の開発。地中深くに無数の高性能の爆薬を、自走する堀削機に積んで、目的地に据える研究をな。旧市街でそれをやったのは正解だったな。犯罪者やアウトローな連中の中にはインテリも多い。毎日のディスカッションが楽しかったぜ」 心底そう思っている笑みだった。     
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!