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見ると、一台のバイクが近づいてくるところだった、前時代の乗り物、タイヤで走るタイプだった、それに目を奪われたが。
すぐに別の事に気付いた。
遠目でも判る、黒髪の男が乗っていた。その黒髪は長く、ポニーテールが揺れていた。
近づいてきて判る、肌も浅黒い、その姿にカイルは息を呑み、アリアはさすがに驚いたのかカイルの背に半分身を隠し、袖をそっとつまんだ。
バイクは二人の近くまで来ると、横付けに停めた。
「よう、初めまして、兄弟」
ゴーグルを外し微笑む、その瞳はカイルと同じ、僅かに青みを帯びた漆黒だった。
「お姫様も」
アリアには会釈をした、アリアも小さく会釈を返す。
「ライル……!」
その名を呼ぶと、ライルは屈託なく笑った。
「永遠の別れの前に顔くらい見てみたいと思ってな。旧市街でも黒髪の奴なんかいなかったから、どんなもんかと思って」
「あなたは、何をしたんですか?」
カイルが聞いた。
「爆弾の開発。地中深くに無数の高性能の爆薬を、自走する堀削機に積んで、目的地に据える研究をな。旧市街でそれをやったのは正解だったな。犯罪者やアウトローな連中の中にはインテリも多い。毎日のディスカッションが楽しかったぜ」
心底そう思っている笑みだった。
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