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「ああ。もう虫の息で会話もままならなかったけどな。最後に顔くらい見ておきたかった。なんせ会ったことも無い『父』だったからな」
カイルはぎゅっと唇を結んだ。
「じゃあな、兄弟」
改めてじっと目を合わせる。
「最初で最後だが、逢えて良かった」
カイルは目が離せなくなった、キラキラと輝く青みを帯びた瞳だった。それがこんなにも綺麗だと初めて知った。
「──ライル……!」
腕を伸ばしていた、細いとも思える肩に腕を回し抱き締めていた。
「最初で最後なんで駄目だ、一緒に行こう。その為の船だ」
「言ったろ。億に上る人間殺しておいて、のうのうと生きるつもりはない」
「でも……!」
「あーあ」
ライルはカイルを無理矢理引き剥がす、その直前に一瞬抱き締めた事を、カイルは知っている。
「おっさんがお前に何も話さなかったのが、よく判る。計画を知ったら船は作らないと言い出すか、もっと大規模な船を作って、できるだけ乗せて逃げようとか言い出したろうな」
「──そんな事」
「ほら、もう行け」
ライルはアリアの方へカイルを押し出した。
「お前は生きろ。自殺じゃなく天寿を全うするんだ。それがおっさんの希望だ」
「……天寿を……」
「他のサリファはもう何組かは外に出てるみたいだ。外で逢えるといいな」
「ライル、あなたにもう1度逢いたい。生きてください、いつか迎えに来ます」
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