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ライルは笑顔で手を振っただけで答えに変えた。
微かに伝わって来た感情があった。
(生きねえよ)
最大の爆発が起こるのは宇宙開発局がある首都の周辺、そこへ戻りノイマンの傍に戻るつもりだ。
ライルは最期のたった数時間だけでも傍にいたいと思う人は、自分が子供の時から見守り育ててくれた人だった、自分がどれほど恵まれていたか、こんな時に知るとは。
「お姫様とお幸せに」
笑顔で言われ、カイルは涙を堪えてアリアの手を取り、宇宙船に乗り込んだ。
タラップが閉まるのを見届けるとライルはバイクに乗り走り出す。
船が動き出すと、小高い丘の上にライルがいるのが見えた。
見えるはずもないのに見えた、笑顔だった、とても幸せそうな笑顔だった。
***
宇宙に出て間もなく、救命ポッドを一つ発見する。
中には貴族の身分のサリファのハザと、侍女で恋人のルシールがいた。
道ならぬ恋をした二人は、混乱に乗じて逃げ出してきたのだった。
出逢えたサリファはその二人だけだった。
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