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「上から見てたって……」
カイルは頭上を見た、木々はあるがその距離から飛び降りたと言うには不自然な落下位置だった、更に上には高層ビルしかないが、何処から見ていたと言うのか。
「エイルって……!」
三人しかいない黒髪の烙印を持つ者、名前は知っている。
カイル、エイル、そしてライル──。
「そうよ」少女は微笑んだ「私はエイルと暮らしてるの、お互い監視している状態ね」
「監視……?」
カイルが意味を考えていると、少女は遠慮なく顔を近付けてきた。
一定の距離以上近づけば避けられる生活をずっと送ってきたカイルは焦る。
ノイマンにさえ、そんなに近付かれた記憶は、はるか遠い。
「え、あの……」
カイルの方が後ずさった。
「あなた、瞳も黒いのね」
言われてカイルは戸惑い、視線を外した。いつもは視線が合うと、先方が明らかに恐怖を湛えて視線を外されるのに、今は逆だった。
じぃっと遠慮も無く覗かれ、なんとも居心地が悪い。
「とっても綺麗」
素直な感想に偽りは感じられなかった、カイルは驚き、再び視線を合わせる。
琥珀色の瞳が、嬉しそうに揺れていた。日差しを通すと金色にすら見える瞳だった。
吸い込まれた、いや、正確には、見つめ合っていた。
「夜明け前の空の色、まるで星屑を散りばめた宇宙みたい」
穏やかな笑みで言うその言葉に、カイルの心は弾んだ。
お互い無意識の内に視線を絡めていたが、不意に、少女は驚いた様子で背後を見た。
「ヤバ……! エイルが……!」
視線の先を見ると、カイルは息を呑んだ、角を黒髪の少年が出てくるのが見えた。
自分以外では初めて見る黒髪だった。
彼は金髪の少女を発見するなり怒鳴る。
「アリア! どうしてあなたはそう逃げ足が速いんですか!」
少女は小さくなって「ごめんなさい」と呟く。
「勝手に出歩くと、外出することさえ叶わなくなると……!」
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