【カイル】

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歩み寄るエイルが、カイルの存在に気付き、はっとする。 エイルの空色の瞳が、カイルを見つめた。 「カイル、ですね」 呟くように呼んだ、アリアは嬉しそうに微笑み、その名を繰り返す。 「カイル」 名を呼ばれ、カイルは心臓が激しく脈打つのを感じた。 アリアはエイルが近付くより早く、歩き出していた。 「アリア!」 エイルの声を背に受けながら、アリアはカイルに小さな声で言った。 「明日のこの時間、ここで待ってる」 聞き間違えかと思った、空耳かと──そう思う程小さな声だった。思わずその姿を視線で追うと、アリアは笑みを残して走って行く。 「何処へ!? アリア!」 エイルは後を追って行く。 *** 翌日、作業するために与えられた部屋で、たった一人で黙々と設計図に向かっていた。 まだ少年だったカイルに与えられた仕事、3、000人収容できる移民船を作ること。 「移民? そんな計画が出てるのか?」 カイルが聞いたが、ノイマンは「疑問を挟まずやれ」とだけ言った。 エンジンから各部屋の装飾まで、全てを一人で作る、五年かけて設計図を完成させ、造船場で作り始めて半年、いざ作り始めて見つかるミスも少なくない、日々その修正は事欠かない。 小さな溜息を一つ吐いて、モニターから目をそらした、小さな窓から見える空を見つめて、目頭を揉む。 今日は、今ひとつ身が入らない。昨日の金色の髪が脳裏にちらついて仕方なかった。 定時になり、ノイマンの元へ行く。 「今日は帰る」 ノイマンの返事は予測した通りだった。 「修正は終わったのか?」 カイルは溜息を吐く。 「終わってない、今日は無理だ、やる気が出ない」 「いいご身分だな、気分次第で仕事をするとは」 「明日やる、必ず終わらせる」 目を合わさずに言うと、ノイマンは冷笑した。 「まあいいだろう。自分で首を絞めるのも」 返事を聞いて、カイルは部屋を飛び出していた。
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