〇二日目

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 平日のゲームセンターともあり、人は疎らだった。  彼女はどんどん奥へと進んでいくので、僕もそのあとについていく。  人を好きになるということはそれだけ嫌われたくないという気持ちが強くなる。だから、彼女はこんな僕と一緒にいて良いのだろうかという不安がどこからか沸き上がってくる。 「ねえ……」 「どうしたの?」  彼女は声だけを僕に向け、顔は周りを見渡して何かを探していた。 「僕なんかと一緒にいても大丈夫なの?」  その言葉に彼女は足を止めた。 「それはどういう意味? もう拒絶恋愛をやめたいということなの?」  また悪い癖だと、心の中で舌打ちをした。 「いや、平日なのにお仕事とか大丈夫なのかなって」 「大丈夫よ。今は有給とってるし、それに私がやることなんてたかがしれているしね。あなたこそ、私の心配ばかりしていて大丈夫?」  彼女はそう言って、微笑む。  僕は彼女と出会って、それほど経っていないけれど、彼女はよく笑う人だという印象が強い。そして、その笑顔にも色々な意味が含まれているような気がした。 「そうだね」  彼女の瞳からは生命力が満ち溢れていた。どうしてそこまで強く在れるのか僕にはわからない。まるで僕とは別の人種のように見えた。 「あれとってよ」  僕の袖を引っ張り、指をさす。  そこには、小さなひまわりの人形があった。こんなよくわからない人形で良いのかと思いつつ、僕はお金を入れる。  彼女が神妙な面持ちでそれを見つめていた。ときどき彼女が見せる表情に心臓が跳ね上がる。この表情には、どこか既視感があったからだ。数ヶ月前に僕の働いている会社の一人が自殺した。そいつの見せた表情と彼女の表情が重なるときがあった。そいつも、よく笑う人間だった。  でも、僕はそいつが自殺するまで知らなかったんだ。いつも笑っている人間が裏では泣いているということに。  そいつが自殺する前も僕に微笑みかけていた。いつも通りお疲れ様と言って、その後ろ姿を見送ったのが最期だった。
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