〇一日目

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 消えていく声に僕は耳を澄ましていた。  彼女は眉間にしわを寄せて、ひまわりを眺めていた。申し訳ないことをしてしまったという罪悪感に苛まれているはずなのに体は動かなかった。 「いや……ね、ちょっとびっくりしちゃってね」  彼女はひまわりを見つめながら口を開く。 「ごめんなさい。失礼なのを承知で……」  その言葉に彼女はこちらを向いて、首を横に振った。 「違うの。私もあなたを見ていたのよ」  一瞬、何を言われたのかわからなかった。相当僕の顔が焦っていたのだろう彼女は笑って、ごめんなさいと謝った。 「私がもう少し……ね」  彼女は俯く。ひまわりが枯れていくような儚さに僕はなぜか不安になった。足元がぐらつくような感覚を必死に耐える。 「もし、あなたがよければ私のわがまま聞いてもらえるかしら」  僕はすぐさま頷いた。  彼女は微笑み、僕の方に視線を向けた。そのとき、僕は少しどきりとした。彼女の表情は笑っているはずなのに泣いているように見えたからだ。 「私はあなたに嫌われるように努力する。そして、あなたは私に好きになってもらえるように努力する……なんて、わがままよね」  彼女はまるで目の前に自分の言った言葉があるかのように手を振ってかき消していた。 「拒絶恋愛」  僕は無意識のうちにそんなことを呟いていた。マイナスをプラスにプラスをマイナスにお互いの想いを拒絶する。もし、彼女といられるのなら、僕はそれでも良いと思った。 「なんだか素敵ね。拒絶恋愛……」  彼女の目は何かを見つめていた。それが僕でも、ひまわりでもないのは明らかだった。  僕は小さく息を吐いた。 「僕が! 僕は……それでも構いません。嫌になったらすぐに関係を切ってもらっても良いので……」  言葉はもっと薄っぺらいものだと思っていた。適当にごまかしたり、繕ったりするための道具だと思っていた。  全然違う。本質を突きつけた言葉はあまりにも痛くて、もどかしくて押しつぶされそうだった。 「ありがとう。私なんかで……よければ」  彼女はどこか嬉しそうでもあり、悲しそうでもあった。その悲しみが今ある僕と彼女との差なら、少しでもいいから埋めていきたい。 「ありがとうございます」  僕はその言葉を噛み締めた。彼女がどこに向かおうと、僕は振り落とされないようにすがりつこうと決意した。
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