この身の全てを捧げても

5/5
前へ
/21ページ
次へ
 ぼくは、目を覚ますと川辺に居た。  さっきのは夢だったのか? それともここが三途の川とやらなのか……?  突然、川が盛り上がり、謎の巨体が現れた。波やしぶきでよく見えなかったが、徐々に像を結んでいく。  ああ、これこそは……! 「大弁財天女……!」  彼女は、大きな大きなうんこの形をしていた。母のように優しく朗らかに、父のように雄大で猛々しく。  これぞ神の極点。美の結晶。ありとあらゆるものが嫉妬する、最上の存在。  大弁財天女は、ぼくの頭に直接話しかけてきた。神である以上、会話などという稚拙な行為に頼る必要もないのだろう。  そしてぼくは、全てを知らされた。  宇宙が誕生した理由。世界の真実。人間の存在意義。  だが、それらがトイレに流し忘れた大便並にくだらないと思えるほど、素晴らしき話を聞かされた。  神に殉じたこのぼくが、その行為を讃えられて召し上げられることになったというのだ。身に余る光栄だが、神の末席を汚しはしないかと不安だ。  大弁財天女は、ぼくが神の位に召し上げられた証拠として、天を指し示した。   
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加