水に流されるべき存在

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 朝。鳥の音が響くと共に、ぼくは目覚めた。  親元を離れて一人暮らしをするようになってから、ずいぶんと起きるのが早くなった気がする。普通は逆なのだろうけれど、朝の時間をぜいたくに独り占めできる快感は病みつきだ。  時間はまだ午前六時を回ったばかり。通っている高校へは徒歩で十分もかからないから、一時間以上も時間は余っている。  朝食はトーストとスクランブルエッグ、それと大きめのカップに注いだコーヒー。手短にそれらを食べ終えたあと、部屋にあるランニングマシンで汗を流した。本当は近所を走りたいところだけれど、顔見知りの生徒と顔を合わせるのが何となくおっくうなんだ。朝の時間は、ぼく一人っきりの中で完結させたい。  そうして二十分ほど走っただろうか、軽く汗をかいたあとはシャワー……なのが定石だろうけれど、ぼくは違う。  これからが本番。今までの行いは、すべてこれのための布石に過ぎない。  適度な量の朝食。多めに飲んだコーヒー。そして身体を動かしたことによる大腸への刺激の促進。  準備は万全だ。  そう。  一日の計は朝の大便にあり。というわけだ。
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