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プロローグ
物心がついたころから、さとりはいつも独りだった。
自分がいつ生まれたのかは覚えていない。なんのためにこの世に生を受けたのかも。ただ、気がつけば人里離れた山の奥で、人間たちからは「妖怪」と呼ばれる異形のものたちに囲まれて、自分もまたその仲間であることを知った。
妖怪たちから、さとりは激しく嫌われていた。忌まれていたといっても過言ではない。理由は簡単だ。さとりが周りのものたちの考えていることをわかってしまうからだ。
『考えていることがわかるなんて、気持ちの悪い子だねえ』
『見てごらんよ、あの目。一体あの頭の中で何を考えているのかゾッとするね』
『おお嫌だ。こっちを見たよ』
『死ねばいいのに』
『いっそのこと、あの細い首をこの手でキュッと絞め殺してやろうか』
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