第1話 突然の坂道

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私はその”残業なし”の案件を、片っ端から印刷。 そして、それを職員の人の元へ持って行った。 開口一番言われた言葉は、私にとって衝撃的だった。 「この職種は、経験済みですか?」 「えっ!?」 私は、プリントアウトした求人票を、もう一度見直した。 どれも初めての職種だ。 「いいえ……」 「経験なしですね。」 職員の人は、冷静にメモをしていってる。 「あの……」 「何でしょう。」 メモに集中していて、こっちを見てもくれない職員の人に、質問するって、かなり勇気がいるけれど…… 「経験があった方が、いいんですか?」 「そうですね。あった方が決まりやすいですけれど、まだ23歳ですからね。無くても面接はして貰えると思います。」 私は、息をゴクンと飲んだ。 経験? そんなブラック企業の1年程の経験と、契約社員の半年程の経験で、経験と呼んでいいのか。 私は、唸るしかなかった。
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