第1話 突然の坂道

15/24
前へ
/24ページ
次へ
「でも、私……半年前の就職活動では、全く正社員になれなかったし。」 「時期があるのよ、時期が。」 「自分が、仕事できる人間だなんて、思えないし。」 「自分で思ってる人なんて、大抵勘違い野郎よ。」 はははっと、柳井さんと一緒に笑った。 「あーあ、元気出ました。有難うございます、柳井さん。」 「ううん。頑張れ!」 「はい。」 話をしている間に、午後の始業まで、あと15分を切った。 その時間になると、市来さんがのんびり、外のランチから帰って来る。 「お帰りなさい。」 私が声を掛けると、市来さんはお財布を胸の前で持ちながら、目をパチパチさせていた。 「あれえ、水久保さん。ちょっと見ない間に、顔明るくなったぁ。」 「ちょっと見ない間で、ほんの40分ぐらいですよ。」 何を言い始めるんだと思ったら、柳井さんもクスクス笑いだした。 「ううん。ホント、顔色良くなった。」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2514人が本棚に入れています
本棚に追加