第1話 突然の坂道

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「大体ね、市来さんはいつも、たるんでるのよ。水久保さんを、少しは見習ったらどうなの?」 私を見習う! 柳井さん、さっきの言葉はウソじゃなかったんだ! 私は心の中で、手を合わせ嬉しで、胸がいっぱいになった。 「そんな事言ったって、真面目に仕事してればいいってもんじゃないないじゃない。現に水久保さん、契約切られ……」 「ちょっと!」 二人が私を見て、”しまった!”って顔をしている。 私の中で、嬉しさがだんだん、しぼんでいく。 真面目に仕事しているだけ。 それが、私の周りからの評価。 そうか。 だから、人事部の部長も、私の契約を切ったんだね。 「あの、水久保さん?」 市来さんが、私の顔を覗く。 「大丈夫?」 柳井さんも、私の顔を覗く。 私の顔はと言うと、鏡は見てないがたぶん、ものすごく引きつっていると思う。 「水久保さん、元気出して!真面目は長所だよ!」
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