第1話 突然の坂道

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「ああ、それはよかった!」 人事部の部長は、もう一人の人と、喜んでいる。 うん、私も嬉しいよ。 「それじゃあ、助かります。いやあ、この手の話はどうも苦手でね。」 ん? この手の話は、苦手? 正社員にならないかって、言うのが? 「内容が分かっているんだったら、詳しい話は割愛した方がいいよね。」 部長は、私に何かを委ねている。 「あっ、いやそこは敢えて、言って頂いた方が、今後に繋がります。」 なにせ、人生初の昇進の話だからね。 「そうなんだ。」 なのに部長は、悲しそうな表情。 もしかして、一緒に喜ぶあまり、涙がほろり? 「仕方……ないね。では、水久保つむぎさん。」 「は、はい!」 自然に、背中が真っすぐになる。 「残念ですが、来月いっぱいで、契約を打ち切りとさせて頂きます。」 「えっ……」 シーンとなる会議室。 頭が真っ白になる私。 ニコニコ顔を崩さない人事部部長。
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