第1話 突然の坂道

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偏差値だって、悪くはない。 「業績もいいみたいだし。君みたいな優秀な方は、うちの契約社員に甘んじるようなタイプじゃ、ないんじゃないかな。」 「だったら、契約社員じゃなくて、正社員にしてくれても!」 そう言った途端、私は部長の目線に気づいた。 部長は、もう私の履歴書を見ていない。 他の人の履歴書を見ている。 つまりは、決定事項。 私に相談の余地は、無しって事。 後は、そっちで気持ちの区切りを、つけてくれって事なのだ。 「分かりました。」 「本当に、申し訳ないね。」 「いえ。」 私は下を向いて、部長の顔を見れなかった。 「君は、しっかりしてるし、頑張り屋さんだって、所属の課長から聞いてるよ。今後も頑張って。」 「……はい。」 返事はするしかないけれど、有難うは言えなかった。 励まされて、お礼の言葉を言えなかったのは、人生で初だ。 「ここまでで、何か質問は?」
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