セカンド・ラブ

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   ふいに、あの当時の出来事を思い出した。  彼は、陸都の父親は、雨の日に私の目の前でバイクに轢かれて亡くなった。  絶望していた私は陸都を妊娠していたことが判ったことで立ち直ることができ、出産して子育てしてここまできた。  彼にここまでやってこれたんだよ、と思っていたら急に寂しさが襲ってきて、いつの間にか目に涙が溜まっていた。 「万莉奈さん?」  私の顔を心配そうに覗きこむ東山くん。  私は急いで溢れそうになる涙を拭いた。 「な、なんでもないよ。ちょっとね、陸都を妊娠した頃のことを思い出しただけ」 「綺麗です。万莉奈さんの涙」  東山くんが真剣な眼差しで私を見つめる。  その眼差しに私も目が離せない。 「その、綺麗な涙はこれからは俺が流させてもいいですか?寂しさや悲しさの涙じゃなくて、嬉しさや楽しさの涙を、俺が流させたい」  拭いたはずの涙がまた目に溜まってきた。  それはどういう意味?  この涙は勝手に嬉し涙だと解釈してしまうよ。 「おばさんをからかわないの」  涙声で笑いながら言う。 「真面目です」  いつものようなからかい口調が返ってこなかった。 「私なんてホントおばさんだし、顔だってシミできてて隠しても隠しきれてないし、ほら二の腕もプヨプヨだし、それに……」  そっと、私の口唇に東山くんの人指し指が立てられて、自然と言葉が遮られた。 「俺の好きな人のこと、そんな悪く言わないで下さい」
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