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6月5日火曜日 曇り時々雨
飲み屋のママやってた頃のお客の女の子からメールがきた。
Tちゃんというの。美人で知的な雰囲気の女の子だった。
久し振りだなと思ってメールを開いた。
>>おねえさん、お元気ですか?
>>最近、保険の仕事始めたんです。
>>ご興味あったら、ご連絡ください。
そう言えば、3ヶ月程前にもTちゃんからメールがあった。
結婚しましたと書かれていた。
Tちゃんは大学卒業後、就職した先に素敵な先輩がいて
その人を目で追っている内に、自分のデスクを通り過ぎて
隣の会議室に間違って入ってしまったと、笑って私に話してくれた。
『会議してたら、危なかったです(苦笑)』
笑ったTちゃんは可愛かった。とても。
Tちゃんは控えめで、強く自分の意見を言うことはないけれど芯の通った子だった。
その『素敵な先輩』とは違う人と入籍したんだそうだ。
届いたメールに、Tちゃんの面影はなくなっていた。
なくなっていたというのは正しくない。
なにかを隠していたり、自信がなかったり
本当は納得していないのに納得したふりをした人特有の雰囲気。
門前払いされる営業マンが纏ったあの雰囲気に似ている。
私は返信した。
>保険は私の彼が詳しいから、悪いけど間に合ってるわ。
>ごめんなさいね。
Tちゃんはマニュアルのように返信してきた。
>>彼氏さん、保険にお詳しいんですか!
>>どんな内容の保険に詳しいんですか?
私は少しイラついてたわ。
>ごめんなさいね。母が死んで、今ばたばたしてるから
>また別の時でいいかしら?
Tちゃんは返信してきたのよ。
>>そうなんですね!
>>大変な時にすみません。
>>落ち着いた頃にまたご連絡しますね。
以来メールは来ていない。
メールアドレスは変わってた。
【いいのよ、そういうものよ】
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