5人が本棚に入れています
本棚に追加
悲鳴を上げた友人に訝しげな視線が送られる。
「どうしたんだよ」と、別の友人が床に転がったスマホを拾い画面を覗いた。
けど、それもすぐに気味悪そうに手離した。
「なぁ、後ろにいるのマジだよな……すげぇはっきり写ってんだけど……」
友人に促されて、とうとう彼が覗き込んだ。
画面を確認した彼は顔をひきつらせ、そして絞り出すように叫んだ。
「こいつだよコイツ!! この部屋にいんだよ女の霊が!! 引っ越してきた日からずっと気配感じてたんだよ!! 朝も夜も!休みの日も!俺の周りずっとまとわりついてるんだよ!!」
――あーあ……見つかっちゃった……。
そんなに主張するつもりなかったんだけどな……。
みんなが楽しそうに遊んでるから、混ぜてもらいたくなってつい写り込んじゃったみたい――。
翌日早々、彼は不動産屋に部屋に霊が出ることのクレームと、一刻も早く引き払いたいという電話を掛けていた。
店のシャッターを下ろされたみたいに、いとも簡単に幕を閉じた私の恋。
でもいいの。
だってすぐに新しい王子様は現れてくれるから。
「うわぁ、日当たりも間取りもいいし最高ですね!僕、明日からここに住めますか?」
希望に満ちた顔で、一緒に下見に来た不動産屋の社員に訊ねたのはなかなかの好青年。
いわくつき物件なのに、不動産屋はそれを隠して営業スマイルだ。
ほら……また恋がはじまった――。
最初のコメントを投稿しよう!