ひ と め ぼ れ

3/3
前へ
/3ページ
次へ
悲鳴を上げた友人に訝しげな視線が送られる。 「どうしたんだよ」と、別の友人が床に転がったスマホを拾い画面を覗いた。 けど、それもすぐに気味悪そうに手離した。 「なぁ、後ろにいるのマジだよな……すげぇはっきり写ってんだけど……」 友人に促されて、とうとう彼が覗き込んだ。 画面を確認した彼は顔をひきつらせ、そして絞り出すように叫んだ。 「こいつだよコイツ!! この部屋にいんだよ女の霊が!! 引っ越してきた日からずっと気配感じてたんだよ!! 朝も夜も!休みの日も!俺の周りずっとまとわりついてるんだよ!!」 ――あーあ……見つかっちゃった……。 そんなに主張するつもりなかったんだけどな……。 みんなが楽しそうに遊んでるから、混ぜてもらいたくなってつい写り込んじゃったみたい――。 翌日早々、彼は不動産屋に部屋に霊が出ることのクレームと、一刻も早く引き払いたいという電話を掛けていた。 店のシャッターを下ろされたみたいに、いとも簡単に幕を閉じた私の恋。 でもいいの。 だってすぐに新しい王子様は現れてくれるから。 「うわぁ、日当たりも間取りもいいし最高ですね!僕、明日からここに住めますか?」 希望に満ちた顔で、一緒に下見に来た不動産屋の社員に訊ねたのはなかなかの好青年。 いわくつき物件なのに、不動産屋はそれを隠して営業スマイルだ。 ほら……また恋がはじまった――。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加