お局美智

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「若社長になってから、会社はボロボロだよ」 席に戻った愛川は、愚痴を言った。その言葉の裏には、社長が愛人を社員扱いにして手当を給料で払っていることに対する批判があった。 美智は同じ気持ちだったが聞き流した。同意したところで事態は良くならない。 「それよりも課長……」美智は、青田商店の入金予定時期が変わっていることを確認した。 「あ、そ、それなら、野村課長に聞いているよ」愛川が言い淀む。 野村課長というのは、庶務担当の野村容子。社長の娘だ。有能で仕事は出来るのだが、若い上に何かと野村家の権威を振りかざすので人望はない。ちなみに、容子は入社時から『野村さん』と呼ばれる例外だ。 「そうですか……」 美智も容子とは口を利きたくないので、回収時期が遅れる理由を追及しなかったが、いつもと違って言葉が淀む愛川の態度には不信を覚えた。
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