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チャイムを押すと「はーい」と若い女の声がした。
ドアを開けたのはスッピンだが愛嬌のある顔の女だった。それが雛菊で「だぁれ?」と鼻にかかった声できく。
あぁ、こんな女が男にもてるのだなと思いながら「雛菊さんですね。NOMURA建設の佐久間といいます」と挨拶した。
雛菊は臆することなく、「ばれちゃったよぉー」と奥に向かって言った。
「愛川課長、いるのですね?」
きくと、「どうぞぉ」と中に招かれる。
「入れるなよ」と愛川の声が襖の向こうからした。
「もう、いれちゃったよ」と雛菊がいう。
「断りもなしに……」
その声音には困惑の色があった。
「だってしょうがないでしょ」
雛菊の声は少し突き放したものになっていて、最後まで中年のオヤジを住まわせるつもりなどなかったのだと分かった。
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