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「課長が聞き違えたのですね。先に資料に目を通していただけますでしょうか。後に連絡をいただいたら、課長が顔を出すように伝えておきます」
「そうね。……あぁ、一応聞いておきますけど、決算内容は正確なのよね?」
瑞穂は瞳に不信の色を浮かべた。
「もちろんです。社長が隅々まで確認しています」
「中小企業の経営者なんて、決算書は読めないでしょ」長年、銀行で支店長を務めた瑞穂が経験から学んだことだ。
18年勤めてきた会社を中小企業と切り捨てられた美智の頭はカチンと鳴った。NOMURA建設は代々野村家が実権を握る同族会社で資本金1億円、社員数は150人。確かに中小企業ではあるが、年商70億円は人口20万という地方都市では大きな部類の企業で、そこで働く社員はそれなりのプライドを持っている。
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