『クマさん。』

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商品を選び終わったらしい彼女がレジへ向かう。 僕は慌てて品出しを中断してそちらへ走った。 他の奴に取られてたまるか、このキャンペーン中の僕の癒しだというのに。 彼女は丁寧に商品を置いて「お願いします」と笑顔で言った。 天使だ、天使がここにいる。 この笑顔を見るだけで今日も一日頑張ることができるのだ。 並べられたサンドイッチ一つとスイーツ一つのバーコードを読み取っていく。 いつも思うのだけれど、これでお昼足りてるのかな。 お財布から小銭を出している彼女の細くて白い手首を盗み見る。 せめてもう一つくらいパンを買っていけばいいのに、などと余計な心配をしつつ会計を済ませた。 「ありがとうございまし.....あ! 台紙、いります、よね?」 ビニール袋に詰めた商品を渡す際にレジ横からシール台紙を抜き取って彼女に見せる。 一瞬きょとんとした彼女は少し照れくさそうに笑って「ありがとうございます」とそれを受け取った。
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