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どうして彼女は今日も制服なのだろう? くるくるとボールペンを回しながらふとそんなことを考えていた。土日平日関係なくいつも彼女は制服を着てその席にいる。少なくとも僕が彼女のことを気にしだしてからは毎日だ。学校に行くと親に嘘をついてここに来ていると思っていたが、さすがに夏休みまでそれを続けるのは不自然なんじゃないだろうか? 僕がペン回しに飽きて鼻と唇の間にペンを挟んでいると彼女がぱたんと分厚い本を閉じた。
いよいよか、と僕は再び原稿用紙に視線を戻し彼女になんて興味のないフリをする。異世界の砂漠を横断するキャラバンの様子を描写しながら耳だけは彼女の動向をうかがっていた。
いつまで経っても彼女が席を立つ気配がせず、怪訝に思いながら顔を上げると予期せず彼女と目が合った。とっさに目を伏せる。原稿用紙に目を落とし、自分の不審者ぶりに呆れているとコツコツと指で机を叩く音が聞こえた。恐る恐る視線を上げると正面との白線の境目にノートの切れ端のようなものが目に映った。
僕がそれを見つけたことに気付いたのか、彼女の指に押されて切れ端が白線を越えてくる。僕はそれに触れることなく書かれている文字を読んだ。
『なに書いてるんですか?』
女子高生らしい丸みを帯びた可愛らしい文字だった。もう少し目線を上げると先程読み終えたシェイクスピアを机の中心に置き、微笑みを浮べた彼女と再び目が合った。
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