暗闇の向こう側

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  ◇  それは、とある雨の日の出来事。  スリップした一台の車が、高校へ登校中だった生徒達の列へと突っ込んだ。  何人かの生徒が巻き込まれ、数名の死傷者が出た。  僕もその内の一人。  病院へ運ばれると、すぐに手術が行われた。  けれど、懸命の治療も虚しく僕の右目は失明、左目はほぼ光を失った。  ここまで聞くと、みんな僕の事を哀れな少年だとしか思わないだろう。  ところが、僕にとってそれはそうでも無かった。  僕はずっと、自分のこの両目が疎ましかった。  だから、正直嬉しかったんだ。  もうアレを視なくても済むのだと言う、そんな現実が。
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