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そんなものは初耳だった。
けれども、実際にその現象は起こっている。
今、僕に見えているのは暗闇のみだ。
「君も霊なのか……どうして僕にこんな事をする?」
『だって。せっかく助かったのに殺してくれなんて……死んじゃった人に申し訳ないと思わない?』
僕ははっとなった。
この子はもしかして――
『私もあそこにいたの。あの事故に巻き込まれた一人なのよ』
やはり……数人の死傷者を出した、この子はあの事故の犠牲者だった。
「ごめん……君も生きたかったんだよな」
僕は素直に謝った。
『あなたが悪い訳じゃないけどね』
ふわりと僕の瞼から、彼女の手が離れる。
いつの間にか僕の目の前には、ふんわりとした長い髪の、可愛らしい少女が立っていた。
けれども、この制服は僕の高校の物ではない。
確か、隣町の女子校の物だったような……
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