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『あなたさえ良ければ、これからは私があなたの目になるわ。視たくないモノからも守ってあげる』
「……どうしてそこまでしてくれるんだ? 僕らは縁もゆかりも無い筈だ」
それは率直な疑問だった。
『縁? 縁なら出来たでしょ? 同じ事故に遭って、私はあなたの手助けが出来ると判断した。それに私もあなたがいると助かるの。これが縁よ』
「僕がいると助かる? 僕に何が出来るって言うんだ?」
『私って本来あの場所からは動けないの。いわゆる地縛霊ってやつ? だから、あなたに憑いていれば私も一緒に移動が可能って訳』
「なるほど。ギブ・アンド・テイクと言うやつか」
正直、失明自体はかなりのショックだった。
ただ、視たくないモノから逃れられると言う喜びの方が勝っていただけだ。
その考えが根底から覆された時、僕はどうしようもなく打ちひしがれた。
だからこそ、この申し出は僕の心を強く揺さぶった。
「じゃあ、名前を教えてくれないか? 僕は――」
『知ってる。榎並祥一(えなみしょういち)くんだよね。私の事は【アズ】って呼んで』
「分かった。これからよろしく【アズ】」
この日から、僕とアズとの二人三脚の日々が始まった。
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