暗闇の向こう側

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「君に触れたい……」  我が儘なのは分かっている、けれども―― 『ごめんね、祥一。でも、私はずっと傍にいるよ』 「憑依とか、そう言うのは出来ないのか?」 『出来るかも知れないけど……それは私であって私でないと言うか……何となく、嫌なの』  確かにそうだ。  目の前にふわりと揺れる柔らかそうな髪も、その肌の感触も。  自分が触れたいのは、アズ自身に他ならない。  憑依で体感出来るものは結局、赤の他人のものでしかない。 「困らせてごめん。好きだ、アズ」 『私も。大好きだよ、祥一』  まさか、自分が幽霊に恋をするなんて……  そんな切ない想いが、最近は抑えきれなくなって来ていた。
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