24人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
大学病院での定期検査の日。
あまりに長い待ち時間に耐えかねて、僕はうつらうつらと舟を漕ぎ出していた。
その時、アズが寝ている僕から静かに離れて行くのを感じた。
「アズ……?」
僕から離れたアズは、迷いなく病院の廊下を突き進んで行く。
一体何処へ行くのだろう?
僕はアズの姿だけを目印にして、何度となく人や物にぶつかりながら、その後を懸命に追い掛けて行った。
壁を這うように進んで行くと、外来患者のいない静かな病棟へと辿り着いた。
そこには、数人の患者達がたむろしているのが見える。
僕の目にもはっきりと視える彼らは、かつて患者だった人達だ。
そんな中、アズはある一室の中へと、少し躊躇いがちに姿を消した。
最初のコメントを投稿しよう!