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「あっ、お見えになりました。ほら、ごらんなさい。あの人たちです」
俵太がいう方向に目を向けると、ヒョコヒョコと二人の白髪頭のお婆さんがリヤカーを押しながらやってくる。
そのうちの一人のお婆さんが、俵太に気づき、ぶっきらぼうにいった。
「なんや? 今日は醤油の日ちゃうやろが」
「お客さまをお連れいたしました」
すると、もう一人のお婆さんが、
「ケッ! 余計なことしくさって、お前んとこの醤油のせいで、こっちはいっこも儲けないねんぞ」
双子だけあって、どっちがどっちと見わけがつかない人たちだが、口の悪さも同じようで、店を開ける準備をしている間、ずっと俵太に文句をいっていた。
それを俵太は、目を細め笑顔で返している。
ひとりのお婆さんが、洋志に手まねきした。
「にいちゃん、あんたやがな。にいちゃん、ちょっと、こっちこい」
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