四杯目・ふたつの醤油

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たこ焼きを買って、屋台の椅子を借りて食べようとしたが、とっとと、消えろ!と、お婆さんたちに厄介払いされたので、仕方なく洋志の車で食べることになった。 「こわいお婆さんたちでしたね」 「心のやさしい、いい人たちですよ」 俵太は、ぬけぬけといってくる。 「さぁさぁ、熱いうちにいただきましょう」 俵太が、たこ焼きをみせてきた。 洋志はお婆さんたちから離れていたので気づかなかったが、このたこ焼きにはソースがぬられていない。 たこ焼き自体には味がないのだし、屋台のたこ焼きといえば、ソース、鰹節、青のりを乗せてあるのが定番だ。だしにつける明石焼ってのもあるにはあるが。 「このたこ焼きには味がついているのです」 俵太が爪楊枝を渡しながらいってくる。 「へぇ、そうなんだ」 洋志は、たこ焼きに爪楊枝を刺して、口にぱくっと放りこんだ。
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