四杯目・ふたつの醤油

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そういうこと、いうのはやめてよ……あれ? 新鮮な蛸は、蛸そのもののうまさで、タネの出汁に醤油が使われている。と、洋志にはわかった……でも、ちょっとおかしい。 はじめて俵太の醤油を試飲した時、醤油の違いに気づかなかった洋志だが、毎日食べる『桜川』のうどんのおかげで、俵太の醤油と他の醤油の違いがわかるようになっていた。 出汁にほんの少し醤油が足されているようだが、洋志はこのたこ焼きに使われている醤油が、俵太の醤油ではない気がしている。 「ほほぅ。お気づきなのですか?」 俵太の店では二種類の醤油を造っているらしい。このたこ焼きに使われている醤油は『桜川』のものとは違うという。 「他の醤油蔵元は多くの種類を造られておられますが、当店はなにぶんにも小さいものですから二種類しかございません。それにしても少量の醤油しか使われていないのに、よく気づかれましたね。あっぱれでございます」
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