二杯目・桜川のかけうどん

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洋志が三杯のうどんをおぼんに乗せ運ぶ。 運びながら洋志は、湯気のかおりがいつもと違うことに気がついた。それに知らず知らずのうちに、唾液が出てくる。 なんでだろう? 醤油を変えただけなのに? 「では、いただきましょうか」 洋志がそういうと、それが合図だったかのように、三人が同時に箸を持つ。 洋志がつゆをすする。頭の中に、たとえようのない衝撃が駆けめぐった。 「うっめぇ」と、思わず声がもれる。 徳三の顔をのぞくと、満足していることがわかりすぎるくらいわかった。 自分は、評論家でもグルメレポーターでもない。小粋な表現で、このうどんの味を表現することなんて、とてもできそうにもない。 「旨い!」としか、洋志はいえなかった。 洋志には、幼いころから、ことある毎にうどんを食べさせようとする時子に反発して、うどんを食べない時期がある。パン屋の息子は、パンを嫌うんだよ。といったりもしていた。
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