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自宅の最寄り駅では、難病の子供が臓器移植手術を受けるための募金が呼びかけられていた。
「あの子よりは長生きするくせに」
無性に腹立たしかった。
家に帰って、見守ってくれていた母と共に買ってきたご飯を食べて、少しだけ仮眠をとった。炬燵の中にはミッケともう一匹の猫、ハチが眠っていて、その中をたまに覗き込みながら、炬燵を囲んで母と私も寝た。
最後に家族みんなで一緒に過ごすことができて、本当に良かったと思う。
夜になって、ミッケがベッドでゼイゼイとあえぎ始めた。
重たい動きでベッドから降りて、私たちの目を避けるようにしてヨロヨロと押入れに向かおうとしてよろめき、ぶつかり、倒れて失禁した。
その辺りのことを、正直、私はあまり覚えていない。
ミッケは痙攣し、喘ぎ、もう死んでしまうのがわかった。
母が、「もういいから、もう頑張らなくていいから」と泣いていた。
私は、ミッケが苦しむ姿をきちんと見なければいけないと思った。
ミッケが動かなくなった。
私はしばらくの間、それが死んでいるのか、呼吸が長く止まっているだけなのかわからなかったけれど、病院で働く母にはすぐ、死んだことがわかったという。
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