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ミッケが死んだ日
「末期ガンだって」
留守中に猫の様子を見に来た母から連絡があった。
ミッケは十歳を超えた三毛猫。
体調が悪そうだったので母が病院に連れて行けば、余命たった一、二日とのこと。
現実感がなかった。
私は急ぎ家に帰った。
自宅まで二時間以上かかる距離で、電車に乗っている間が焦れったくてならなかったのを覚えている。
確かに一週間ほどあまり食事をしない、 私の枕の上で苦しそうにしていることが増えたけれど、風邪か何かだと思っていた。
色々と調べて鼻水が詰まっているのかもしれないと思い、夜中に乳児用の鼻水吸引器を買ってきて、鼻を吸ってやったりしていた。
そのとき嫌がった彼女が私の太ももをひどく引っ掻いた痛さも、思い出す。
気丈な子だった。
あのときにはもう限界だったのだ。
ひどく苦しんでいるようには見えなかったから先延ばしにしていたけれど、もっと早く私が病院に連れて行けば何か変わったのだろうかと思う。
けれどガンは半年前から進行していたとのことで、気付いたところで、たった数日の延命しかできなかっただろう。
電車の中で、私はそんなことを益体もなく考えていた。
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