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ぼく、ジェンツーペンギン。
名前はまだない。
南極半島の北部で卵から孵って、氷と岩と海が広がる世界を見ていたことは記憶している。
そこで人間に初めて遭遇したあと、気づいたらなぜかここ、日本の東京都渋谷区にある空高学園にいたんだ。
それから一年が過ぎようとしているけど、ここは南極と違って色が沢山あって、賑やかなのに静かで、結構気に入っている。
ここに来て一番驚いたのは、温かい場所にもぼくの遠い仲間が住んでいると知った時だ。
これまでアデリーペンギンやエンペラーペンギンになら会ったことがあったけど、まさか南極から遠く離れたガラパゴスにまでペンギンがいるなんて考えたこともなかった。
気になって図書館の本で調べてみたら、仲間と言っても分類学上で例えるならキツネとタヌキくらい違うと知って、なぜだか少し残念な気持ちになった。
ついでに、人間とは鳥綱と哺乳綱なんていう、かなり大きなところから違うのだと知って心底納得した。
こんな場所に住んでいるからそれなりに人間と接する時間があるけど、理解するのはなかなか難しいからだ。
ただ意思疎通だけに限って言えば、同じ鳥、例えば学園内にいる鶏とするよ りも人間との方がぼくにとってずっとずっと楽だ。
だってぼくは、人間の言葉を話せるから。
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