2.小豆澤幸晴

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「なんだ、今日は朝から来たのか」  玄関で足を拭いているぼくの頭上から、声が降ってきた。  ゆっくり視線を移すと、そこには馴染みの顔があった。  少しうねりのある前髪とメガネという物の隙間から、どんよりした瞳が見える。  今から花壇いじりをしにいこうとしていたのか、タオルを首に掛け、軍手をはめている。  鍵が開いていたのは、出かける直前だったからだったようだ。 「おはよう、ハル。今日もいい天気だね」 「ああ、今日は晴れるらしいな」  ぼくの言葉にハル――小豆澤幸晴(あずさわゆきはる)が少し面倒くさそうに答えた。  彼は空高学園で住み込みの用務員をしているらしい。 「ねえ、今日のご飯はなに? ぼく、お腹減ったんだ」 「来て早々に飯の催促か。分かったよ、何か用意してやる。その間に泥を流してこい。自分でできるか?」  この様子だと、ハルは朝食を食べるつもりがなかったようだ。 「うん、分かった。でもハル用意していなかったってことは、もしかしてまた朝ご飯抜こうとしていたの?」 「朝飯を食べなくたって、死にゃしない」 「そうかなあ。ぼくならお腹が減って死んでしまいそうだけど」
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