2.小豆澤幸晴

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 何も答えないままハルは奥に入っていったので、ぼくは一度外に出て花壇脇にある水道で泥を流していく。  苦手な背中部分もどうにか流し切ってから、初めは大きく、そして次に細かく体を震わせる。  ペンギンの体は人間と違ってこうするだけで水を綺麗に切れるので、便利だと思う。  むしろ人間が水に適していないだけなのかもしれない。  自慢の長い尾羽もしっかりと震わせて水を切ってから宿舎の中へ戻ると、台所のすぐ横の食卓にある階段付きの椅子に座る。  これは、時折ここへご飯を食べに来るぼくのためにハルが用意してくれた椅子だ。  ぼくが自分で上り下りのできる椅子をすぐに作ってしまうなんて、ハルは本当にすごいと思う。 「ほらよ。簡単なもんだけど」 「わあい、ありがとうハル!」  ほどなくして目の前に出されたのは、目玉焼きとお握り、そしてお味噌汁だ。  そして目玉焼きには、すばらしいことにベーコンが添えられている。
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