2.小豆澤幸晴

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「ぼくにも、名前って必要なのかな」 「さあな」  ハルが興味なさそうに視線を逸らす。  でも、ハルが興味ないってことは、きっと名前なんて大したものじゃないんだ。  それなら、適当に何か付けたっていいのかもしれない。  適当……と考えて、すぐに思い出したものが一つあった。 「ねえ、ハルの弟ってなんていう名前だったの?」 「……なんでだ」 「その名前、ぼくにもらえないかなって思……」  言葉を言い終わらないうちに、ハルが湯のみを食卓に叩きつけるように置いた。  僅かにこぼれた中身を見もしないでぼくを見るその視線は、とても鋭く、冷たかった。 「帰れ」  静かだけど腹の底から出されたような低い声は、これまでに聞いたことのないものだった。  多分、ハルは今とても怒っているんだ。  弟の名前を欲しいっていうのは、そんなにも悪いことだったのだろうか。
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