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優秀な研究者だった彼女は、何も出来なくて軍人になるしかなかった自分とは違う。
どんな病にも効く薬を作る為に、若いながらにして人の為に人生を捧げて生きてきた。
そんな彼女が作り出した多くの薬で、助けられた子どもたちが部屋に居た。
その子どもたちと透明な壁を隔てて話している彼女は、一度も笑顔を絶やした事が無い。
「すみません先輩、今日は帰ります」
子どもたちにこんな姿の人間を見せるのは良くないと思い帰ろうとすると、彼女に呼び止められる。
「待って、せっかく来てくれたんだからもう少しここに居て。出来れば私の代わりにこの子たちと遊んでほしいかな」
そんなお願いをされたら、緊急招集があっても断れる筈が無い。
同情なんて無しに、この人の願いは全て叶えてあげたい、例え壁の向こうに居なくても。
「お兄さん変な格好してるね、変な色だし。ダサい服ー!」
そう言って群がる子どもたちを見て彼女が叱ろうとしたが、それを手で制して子どもたちと目線を合わせる。
「最高にダサいだろ、だから君たちが大人になる時にはこんな服は無いと良いな。本当は僕みたいな人間は居たら駄目なんだ、だから今頑張ってるんだ」
迷彩柄の軍服を出来る限り貶して、この子たちに僕みたいな存在を嫌悪させておかないといけない。
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