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中には医者と看護師が立っていて、彼女は辛うじて生きている状態だった。
「薫子はどうなんだ、助けられるんだろ! それ以外の答えは聞いてない、助けられるんだろ!」
医者の肩を掴んでそう迫るが、医者は俯いたまま首を横に振る。
「落ち着いて下さい海桜さん!」
後から来た男の看護師三人に引き剥がされて、取り押さえられる。
「残念ながら間に合いませんでした、余命の日ぴったりです」
「余命? そんなの聞いてない! 聞いてねえぞ!」
「薫子さんには伝えました、彼女は私から伝えたいと私たちに言わないでくれと、口止めされていました」
「嘘だろ……何で言わなかったんだ薫子!」
今度は壁に体をぶつけて薫子に問うが、彼女にはもう笑う気力すら残っていなかった。
「開けろ……この硝子を開けろ!」
「ですが、それでは海桜さんにも感染……」
「それを承知で言ってんだろ! 開けろよ!」
「分かりました……」
そう言って全員白い部屋から出て行き、暫くして透明な壁が天井に吸い込まれていく。
ゆっくりと上がっていくのを待ちきれず、床に体を付けて隙間から潜る。
彼女に駆け寄って抱きしめると、服の下は予想以上に細かった。
その細い腕に抱かれたカエルの人形が少し強く握られる。
「薫子!」
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