コンビニ屋

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コンビニ屋

*** 夜のネオンに照らされてキラキラと輝くこの街も、夜が明けるに連れて、そのゴミゴミとした薄汚れた街が浮かび上がって来る。 そんな街の片隅に小さなコンビニエンスストアがひっそりとある。 『コンビニ屋』と呼ばれているその店は、他のチェーンのコンビニとは違い、弁当も無ければおにぎりも無く、漫画や雑紙も扱っていない。 限られた種類の飲み物とスナック、オーダー毎に作られる簡単なサンドウィッチとコーヒーやココア、そして小さなテーブルとベンチが少しあるだけ。 その『コンビニ屋』は二十代後半位の男女二人が深夜位から明けがたまで営業している。 その一人、大概は白いワンピース姿のその女性は、その長い黒髪をサラッと流している事もあるが、殆どの場合、ポニーテールに仕上げている。 透き通る様な白い肌と折れてしまいそうな細い身体。 言葉少ない彼女は、時折大きな八重歯を見せて優しそうな笑みを浮かべるが、いつも悲しそうな顔をしている。 男性の方は、白のカラーシャツにブルージーンズで、その彼女に寄り添う様に、いつでも彼女の側でニッコリと微笑んでいる。 店内の照明は少し落し過ぎだが、小さな音でジャズが流れていて、コンビニと呼ぶより、ちょっとしたカフェと呼ぶ方が相応しい。 でもそんな処だからこそ、夜の仕事帰りの疲れた人達が、アパートに帰る前、気軽に立ち寄り、束の間の息抜きをしにやって来るのかもしれない。
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