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『これからログインするアバターの目線カメラをこちらで映しますので、皆さんがよく疑われていたプロモーションビデオの映像が作り物かゲームのものか、どうぞしっかりご覧になってください』
カメラ目線で微笑み、最後の操作を終えたのか卵が閉じ始めたところで素早く身を抜く。セルが完全に閉じて数秒後、すぐ横に設置された大きなスクリーンに色が入った。画面一杯に白で染まったかと思うとつい先ほどまでカメラが捉えていたセルの内部が映し出され、その景色がドット状に剥がれ落ちていく。剥がれた箇所に見えるのは新しい景色。
『うっ……』
スクリーンから聞き覚えのない高めの声がしたかと思うと、一瞬視界がぼやけ、目の前に何かが持ち上がって来る。それかピントの合っていない腕だと識別できる頃にはその奥に見える街並みが見えてきた。
『おお……おおっ!』
ゲームの中のカメラが左右にグリグリ動き、下に向いて手足が動く様を捉えたかと思えばすぐ側に立つ巨大なオベリスクのような建築物を見上げる。
『これはすごい……本当に異世界だ。手足の感覚も何も変わらないし、見ている景色も現実のそれと違いがわからない! でもなんだか声は違う気がしますね』
高鷲某がスクリーンの傍のマイクに口を近づける。
『あくまで今の体はこちらで用意させていただいたアバターになりますので体はもちろん、声もゲーム内で設定可能なボイスになっています。ご自身の声紋を認識させ、コロニー内でそれぞれの声を使っていただくことも可能です。ただ、電子機器等に録音させたものは識別できないようになっておりますので、そこはご了承していただけるようお願いします』
『声優さんの声を借りてアニメやゲームのキャラクターを演じるのは難しいということですか。しかし自分自身を投影して遊ぶことができるというのも素敵ですね』
「みんなはやるとしたら、アバターをどうしたい?」
桜香が兄妹達に問いかける。
「そうだな。せっかく違う自分になれるというのなら、別の僕になってみたいかな」
「背の低い女の子とか?」
海斗のからかいに氷河は紅葉を一瞥し、
「それはそれで興味もあるかもしれない」
「まじかよ……男ならでかい体でかっこよくなるのが基本だろ」
「こればかりは人によると思う。二人はどうだ?」
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