洗濯機

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洗濯機

 入部した運動部はともかく人数が多くて、マネージャーだけでは雑用の手が足りないから、新入部員が手伝いをするのが当たり前だった。  ユニフォームの洗濯や備品の買い出しなどが主だが、一緒に入部した物か仲間の一人が、洗濯当番になると必ず、洗濯機を覗き込んだまま動かなくなってしまう。 何をしているのかと尋ねると、その声で我に返り、雑用仕事に励み出す。そんなことが何度も続いて、他の部員がその子のことを不審に思い出した頃、事件は起きた。  当番で、その子が選択係になった。誰もがまた洗濯機の前で立ち尽くすのかと思ったが、先輩達に当番を守れと言われているので他の仕事を押しつけられない。だから、いつものように洗濯機の前で固まるその子をなんとなく気にしつつ他の雑用をこなしていたら、ふいにその子が回っている洗濯機に首を突っ込んだ。  近くにいた子が慌ててその子を後ろから引っ張ったが、洗濯機に突っ込んだ首はまるで抜けない。その様子に、私や他の子も洗濯機周りに駆け寄り、数人がかりで首をっ突っ込んだ子を引き起こした。  その時に、その子の頭部に巻きつく洗濯物の中から赤ん坊が笑うような声がした。 「今の、何?」  周囲を見ても赤ん坊はおろか、似たような鳴き声を上げそうな動物すらいない。だから気のせいだと思い、手分けして、先輩や先生に知らせたり、まだ巻きついている洗濯物を取ったりしていたのだが、少しして、洗濯物を外していた子達が悲鳴を上げた。
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