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(こんなに一生懸命育てているのに…
何でうまくいかないの…)
子育ての苦悩はそれぞれ違うのかも知れないが、他の子がママと手を
繋いで楽しそうにしているのを
見るたびに落ち込み…
劣等感にさいなまれた4年間だった…
(…そんな異端児だったサトシも…
小学生になるんだ…)
(…とにかく大変だったけど、
よくここまで無事に大きく
育ってくれたね…)
しみじみと感じ入る…。
暖かい春風がふわりと吹いた。
わたしは甘い香りと共に一息つき、
感慨深い想いで、
飾り付けられた式の会場である
体育館へと入った。
成長を喜ぶと同時に、
真逆の不安も頭をよぎる…。
(…学校生活をまともに送れるだろうか…)
(…学校に馴染めなかったらどうする?)
(…不登校にでもなったらどうすれば?)
心配すればきりがない…
そんなことまでが次々と頭に浮かぶ…
…が、次の瞬間そんな困惑の全てが、
取り越し苦労なのだと気付いた。
体育館の入り口に目を向けると、サトシは誇らしげに堂々と入場してきたのだー。
その姿はこれまでの幼い泣き虫だったサトシではなかった。
幼いサトシは一瞬にして何処かへ
消えていて、確かに成長した
お兄ちゃんらしい頼もしい姿
に変身していたのだった。
ママの視線に気付いて、少し照れくさそうにこちらを向いて笑顔を浮かべていた。
わたしは感激で胸がいっぱいになり、目が潤んでいたー。
…思い返すと…あの時のあの瞬間が…
わたしの人生の絶頂期だったのかもしれない…
最高に幸せな時間は…
そう長くは続かなかった…。
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