兆候(1)

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和やかに進む式、活気溢れる子ども達。 クラスの発表では、幼稚園から仲良しだったヨシ君とも同じクラスに なれてホッとした。 ママ友だったのもあり、 これはかなり心強い事だった。 わたしは他の土地から嫁に来ていたので、なかなか地元のママ友の輪に 入りにくかったが、 ヨシ君ママは気さくで話やすく、 すぐに仲良くなれた。 ママ友同士の情報網は 学校生活での重要ポイント。 幼稚園時代にその事はすでに 合点していた。 ヨシ君ママは情報通だった。 わたしとヨシ君ママは体育館 の前後の席に座って式の合間に 小声で話ながら、お互い入学の喜びを分かち合っていた。 式の終盤ー校歌斉唱 舞台の横の校歌額を見ながら、 新1年生と一緒に保護者も 合唱した。 わたし達の席は体育館の後ろで かなり距離があった。 ヨシ君ママが後ろに振り返って すかさず小声でこう言った。 「あかりちゃん、校歌の文字見える? あたし全然読めないんだけど…」 (目を細めながら本当に見にくそうだった。) 「わたし昔から眼だけはいいんだ~」 「え~いいな~」 (テヘヘ…)照れながら校歌斉唱ー 確かにこれまで視力の事で 困った事がなかった。 受験勉強プラス学校の勉強も 5年間頑張ったし、美大に行く為 に朝から晩まで4年間絵を描き続け、 眼は人一倍酷使してきた のかもしれないが… ありがたいことに今まで 何事もなく来れた、 だからこれからもこのまま 変わらずにいるのだろうと 思い過ごしていた…
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