763人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「うん、竹内先輩が、発酵器を買ったから、作ろうって。いっぱい作ったからね、たっちゃんとも食べようと思って」
「夕飯に肉まんか、いいよ」
「あんまんも作ったよ、ピザまんとかキムチまんとかハムまんとか」
あ、アグレッシブなのも作ったんだね、味見はしたのかな?
「今、春雨のスープ作ってるの、もう食べる?」
「うーん、中華まんもいいんだけど」
僕は小首を傾げて提案した。
「今、少しだけど雪が舞ってたんだ。よかったら散歩でもしない? 萌絵は雪なんか見慣れてるだろうけどさ」
言うと萌絵を顔がぱっと明るくなった。
「ううん、行く! 火を止めてくるね!」
「あ、春雨、のびちゃう?」
「まだ入れてないから大丈夫!」
萌絵は慌ててキッチンに戻り、コートを手にして部屋の電気を消して玄関へやって来た。
「萌絵は雪なんか嬉しくないでしょ?」
あんまり嬉しそうなので言ってしまった。
「うん、雪は大変だから好きじゃないかな。でもたっちゃんが誘ってくれたなら嬉しい」
「僕も嬉しいよ」
手を繋いでマンションを出た、有り難いことにまだちらちらと雪は舞っていた。
萌絵は嬉しそうにそれを見上げていた、僕と見る雪はまた別の物なのだろうか。
この笑顔を。
この先もずっと僕の隣で見られたらどんなに幸せだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!