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【今日は渋谷で、】
「渋谷で待ち合わせしてみたい」
萌絵が言うから、わざわざ時間をずらして家を出た。
待ち合わせの定番、ハチ公前。
人が多くて待ち合せも大変そうだけど、どうせならこれくらいしないとね。
「ねえ、ねえ! お返事くらいしてよー!」
男の声だが興奮した様子で高く聞こえた。その男の前で萌絵が真っ赤な顔をして、怯えた目で小さくなっていた、三人の20代前半と思しき男達に囲まれて、完全に萎縮している。
「待ち人来ないなら、俺たちとさあ!」
「萌絵ちゃん、お待たせ」
僕が声をかけると、三人に睨まれた、少しビビるけど、そこは大人の余裕でにこやかに。
「友達も一緒だった? じゃあ待たせちゃったけど大丈夫だったね」
僕が言うと、三人は明らかな舌打ちをした。
「んだよ、パトロン付きかよ!」
他にもああだこうだと卑猥な言葉を発しながらもいなくなった、よかった。
僕は溜息吐く、安堵して、だ。喧嘩にならなくてよかった。
萌絵が下目遣いに睨んでいることに気付いた。
「ごめんね、遅くなって。あんな奴らに絡まれて怖かったでしょ」
彼女は男性恐怖症だ、特に年の近い男性は苦手らしい。
「うん……」
言うけれど、まだ怒った様子。
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