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朱音の言葉を聞き奉行は、「なる程、これぞ道理」と感心した。
奉行は二人の商人に対して言い放った。
「よいか、心は勘兵衛殿に返すのだ! 出来るものなら連れてゆくが良い。できるか? できまい! 夫婦といえば一心同体、それをそなたたちは引き裂こうとしたのだぞ!」
その裁定を聞き、昭六、女郎屋共に目を丸くし頭かぶりを振るしかなかった。
奉行はなおも続ける。
「これぞまことの夫婦というもの。二人の祝いに貸した金を祝い金とせよ!」
奉行は勘兵衛へ向きなおり、言う。
「柔と剛、勘兵衛殿、そこもとはなんと良い嫁を娶めとられたか。羨ましゅうござる」
その言葉に恐縮し恥ずかしげに頭を掻く勘兵衛に朱音は、一矢報いたかのような晴れ晴れとした微笑みを向けた。
「如何な剛の者、勘兵衛殿でも道理は斬れませなんだか、しかし朱音は見事斬りましたぞ!」
こうして勘兵衛と朱音は、苦楽を共にする人生の旅路を歩みはじめたのだった。
〈了〉
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