マイホーム

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マイホームを建てる。──それが私の夢だ。 幼い頃、私の家は決して裕福ではなく、五人暮らしの団地住まい。私に与えられたプライベート空間は二段ベッドの上段で、下段に妹、三畳の和室が兄だった。 だが、特に貧乏というわけでもなく、欲しい物など贅沢な品でなければ買って貰うことができたので、自分なりにベッドに手を加え、カーテンを引き、即席の個室を作ったり努力したものだ。 そんな限られた場所で長い間暮らしていた反動だろう、いつしか私は自分の部屋、家を持つことが人生の目標になっていた。 学生の頃からコツコツとだが貯金もした。車も買えないし洋服などに金をかけられない私には、出会いなどは無縁だったが、社会に出てから運命の人に出会えた。 妻とは会社で出会い3年の交際を経て結婚。特別に美人ではないが整った顔に品があり、性格は内向的だがとても気が付く、私には少し勿体ないと思うこともある。 妻は早めに子供が欲しいと訴えたが、私はマイホームを優先してほしいと切に頼み、渋々だが了承を得た。 それから、五年ほど生活を切り詰め、何とかやりくりし、私の貯金も全て使い頭金を作り、私の夢、マイホームを手にすることができた。 それほど大きくはないが新築庭付き二階建て、庭は妻のリクエストで広めに場所をとった。 荷ほどきを一通り終え、引っ越し蕎麦をすすっている時、私は夢が叶った喜びに感極まり思わず泣いていた。
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